元々BMCタガネを数本持っており太めのサイズを追加したかったのですが、価格が異常に高騰して入手をあきらめていました。
そこで同じようなタガネ形状のスジ彫り道具を探して代用することにしました。
候補にあがったのは
- スジ彫りカーバイト
- HGマイクロチゼル
の2種類。
太めのスジ彫りで3種類の道具を彫り比べます。
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彫り比べたスジ彫り道具はコレ!
BMCタガネで次に欲しい幅は0.6mmや0.8mm。
そこで手持ちのBMCタガネは0.7mm、新しく入手したスジ彫りカーバイトとHGマイクロチゼルは0.8と近い幅の刃で比較します。
スジ彫りの幅が0.5mmを超えると一気に難易度があがります。
なので彫り心地を比較して自分に合う・合わないを検討するのにちょうど良いと思います。
BMCタガネ 0.7mm
私が持っているガンプラ用スジ彫り道具の中で一番活躍してます。
この記事を書いてる時点で5年近く刃物手入れ油だけ塗るメンテナンスで研ぎ直しはしていません。
でも今のところ錆びたり切れ味が悪いなどの不満はありません。
エバーグリーンのプラ棒(0.5mm角と0.75mm角)を埋めてディティールアップしたいので、0.6mmと0.8mm幅が欲しいけど価格が高騰しすぎて買えなくて残念。
スジ彫りカーバイト 0.8mm
ガンプラ復帰してスジ彫りをしたいと思った時に0.15mmのスターターセットを買って彫り心地は一度確認済み。
私が乱暴な扱いをしたため購入後すぐに刃が欠けてしまったのでそれ以来ご無沙汰です。
今回はBMCタガネで持っていない0.8mmの刃を入手しました。
HG マイクロチゼル 0.8mm
上の2種類のスジ彫り道具よりも後発で安価な商品。
この記事を書いてる時点では0.6mm幅の設定がないので、スジ彫りカーバイトと被るのを承知で0.8mm幅をお試し入手。
実践、試し彫り!
ちゃんと彫り心地を試したかったので
- 直線彫りで3回ずつ
- 止め彫りで2回ずつ
と彫るシチュエーションを変え合計5回ずつ彫っています。

私のウデが未熟なのはご勘弁を!
直線彫り
まずはタミヤのプラ板に直線で2回ずつ彫ってみました。
0.7mmや0.8mmはスジ彫りの中では太い部類に入るので、アタリがつくまでは細い線以上に撫でるように何度も道具を引きます。(太いので20~30回ぐらいは引いたと思う。)
アタリがついたのを実感できてからは少し刃を立て気味にして彫りました。
一番うまく扱えたのは使い慣れているBMCタガネ。
スジ彫りカーバイトはピーキーな感じで、ガイドテープの側面についているゴミやプラ板の微妙な凹凸を拾って簡単に暴れる感じがしました。
HGマイクロチゼルは先の2商品と比べるとややダルい彫り心地ですが、その分暴れても致命的な傷がつくような気配がせず逆に安心できました。
次にタミヤより柔らかくて彫りやすいwaveのプラ板での直線彫り。
さすがに3回目の彫りということで、どの道具でもタミヤのプラ板の時と比べミスが少なくちゃと彫ることができました。
あとwaveのプラ板はグレーということで、彫っている部分の視認性が良かったというのもあるかもしれません。(白いプラ板は彫れ具合が見にくいです。)
止め彫り
ガンプラスジ彫りの中であるシチュエーションの止め彫り?Iモールド?も試しました。
こういう太くて短いスジ彫りをしたいモデラーさんも多いんじゃないでしょうか?
私にとっては慣れているBMCタガネが一番扱いやすかったです。
スジ彫りカーバイトもピーキーな特性を把握して慎重に作業すればしっかり彫れます。
アタリがつくまでは今回の3種の道具の中で一番神経を使いました。
HGマイクロチゼルはここでもいい意味でのダルさが安心感につながりました。
だからと言って彫れ具合がダメだということはなく、画像を見てもわかる通り他の道具と遜色ありません。
画像だと何十倍にも拡大されるのでアラが目立ちます。(私が下手なのは見逃してください…。)
でも実際に飾ってあるガンプラを肉眼で見た場合、他人には全く区別がつかないだろうし本人も数日後には気にしてないレベルだと思います。
各スジ彫り道具の使用感
試し彫りした道具の使用感です。
どれが優れているとかではなく個性や特徴があります。
BMCタガネ:コントロールしやすい
今回試した道具の中で進行方向のコントロールが一番やりやすかったのはBMCタガネでした。
コントロールすると言うより「自分の意図した動きに素直に従ってくれる」という感じと言ったほうがいいかもしれません。
アタリがつくまでガイドテープに沿って撫でたい時はその通りに反応してくれ、終盤で多少力を入れたい時はそれなりの反応が返ってきて分かりやすかったです。
これはすでに使い慣れているというのもあるかもしれませんが、持ち方のバリエーションがあるという点も大きい。
BMCタガネは
- 裸で持つ方法
- ホルダー付きで持つ方法
の2通りの持ち方ができます。
裸で持つ方法は一見持ちにくそうですが脱力できて無駄な力が入りません。
だからスジ彫りのアタリをつける場合など私はこの持ち方をします。
この持ち方のままスジ彫りを仕上げることもできるし、持ち方に疲れたら終盤はホルダーをつけて作業するという方法をとることもできます。
スジ彫りカーバイト:切れすぎ注意
3種のスジ彫り道具の中で一番切れるというか、刃先が硬くて鋭いと感じたのがスジ彫りカーバイトでした。
これは比較したBMCタガネが5年近く使い込んで多少ヘタッているのに対し、スジ彫りカーバイトが新品だということもあるかもしれません。
怖いぐらい切れるのでアタリつけ段階でガイドテープ側面のゴミやプラ板の僅かな凹凸を拾って意図しない方向に流れていくことが一番多かった。
刃先が硬くて鋭いため注意しないと修正が必要な深い傷がつく可能性があると感じました。
また刃の問題だけでなく道具の総重量も関係あると思います。
スジ彫りカーバイトは専用ホルダーや3mm軸をキャッチできるピンバイスなどでホールドするしか持ち方がありません。
だからどうしても道具の総重量が重くなってしまい、力を入れずにパーツの表面を撫でたい場面でも予想以上に刃先に力がかかっている。
なのでピーキーで暴れやすいのではないかと感じました。
とは言え切れ味は抜群なので道具に慣れてしまえば気になりません。
HGマイクロチゼル:初心者がとっつきやすい
HGマイクロチゼルはいい意味でダルいです。
だから刃先が予想外の方向に流れても修正が必要な深い傷がつく可能性が一番低いと感じました。
初心者さんの場合、特に太いスジ彫りを彫りたい場合に失敗を恐れず一番チャレンジしやすいと思います。
じゃあ彫れ具合はどうか?というと、画像を見返してもらえば分かる通り高価な道具と遜色ありません。
少なくとも私が今回彫った結果はどれを使っても同じでした。
スジ彫り道具の中では低価格帯なのにこの性能なら十分でしょう。
全体的に感じた事
今回3種のスジ彫り道具を試し彫りして全体的に感じた事です。
優劣はない
数十年ぶりにプラモデル復帰して浦島太郎状態のころは、スジ彫り道具は切れ味こそ大事だと思ってました。
でも今は一定水準の切れ味を満たしていればコントロール性や慣れのほうが大事に思えます。
特にスジ彫りが初めての場合は意図した通りに使えて大きなミスをしないほうがガンプラ作りを楽しめます。(スジ彫りで一番やってはいけないのはミスすること。)
各商品の開発経緯や製造方法、ターゲットユーザーや価格帯も違うので優劣をつけて判断するのは違うんじゃないかと感じました。
慣れればどれも十分に使える
今回彫り比べたスジ彫り道具はそれぞれちゃんと彫れることは間違いありません。
各道具に個性や特徴があるので、あとはそれに慣れるだけです。
0.15mmや0.2mm幅のスジ彫りなら誰でも比較的簡単に彫れます。
0.5mmを超えるとどれを使ってもそれなりに難しいので、まずは自分が入手した道具で彫り慣れたほうがいいです。
そのためにプラ板やジャンクパーツで直線やクランク、途中で太さの変わるスジ彫りなど何回も練習しましょう。
ガイドと刃の位置関係も大事
ちょっと余談です。
同じシチュエーションで異なった道具を使ってみて感じたのが、アタリつけ段階のコントロール性・進行方向へブレないためには、私の場合ガイドと刃の位置関係も影響しました。
一般的には自分の手前にガイドテープ、向こう側にスジ彫り道具の刃が位置することが多いと思います。
しかしアタリつけ段階で刃が予想外の方向に流れやすい状態では、手前にスジ彫り道具の刃、向こう側にガイドテープという位置関係が進行方向へのコントロールがやりやすかったです。
これは人間の手・指の構造の影響かもしれませんし、私のクセかもしれません。
またプラ板を平置きにして彫るという状況だったからかもしれません。
アタリさえついてしまえば位置関係はそこまで影響しません。
ミスせずスジ彫りを行うためには、こういう道具以外の部分も大事だと思います。
こんな人におすすめ
それぞれのスジ彫り道具は個人的にはこんな人に向いてると思います。
BMCタガネ:良い道具とずっと付き合いたい人
BMCタガネは良いスジ彫り道具とずっと付き合いたい人向けだと思います。
精度と切れ味・コントロール性ともに申し分なし。
販売元のスジボリ堂さんに依頼すれば刃の研ぎ直しもやってくれるし、上級者さんは道具を揃えて自分で研ぎ直してます。
ただこの記事を書いてる時点では買い占めの標的になって品薄状態なのがとても残念。
職人さんが1本1本手作業で刃付けをしてるので大量生産できないから仕方ありません。
私は価格高騰の前に公式直販で「BMCタガネお試しセット5本組」を適正価格で入手してたのでラッキーでした。
今スジ彫り道具をイチから揃えるとしたら迷わずこっちを選ぶでしょう。
そして後からゆっくり必要な刃幅を買い足していきます。
スジ彫りカーバイト:現時点でスジボリストを目指す人
スジ彫りカーバイトは現時点でスジボリストを目指す人向けでしょう。
精度と切れ味は申し分なし。
BMCタガネに慣れている私はコントロール性がピーキーに感じましたが、慣れれば問題ありません。
初めてのスジ彫り道具がこちらの人は彫れすぎて怖いぐらいなはず。
- 刃の幅は10種類以上
- ホルダーは新旧の2種類
- ケースなど関連商品あり
とラインナップが充実してるのも魅力。
これだけ充実してればスジ彫りで困ることはないでしょう。
あと大事なのが
- 必要なものが
- 必要な時に
- 適正価格で手に入る
という安心感。
私がスジ彫りカーバイトを今から揃えるとしたら、まず0.15mmの刃とスリムホルダー、保護ケースのセットを買います。
そして0.3、0.5、0.7mmの刃も早めに買い足すと思います。
HGマイクロチゼル:入門用やサブ的道具として
HGマイクロチゼルの魅力は刃が1,000円以下という安さ。
この値段でこの性能なら文句ありませんし、数年後に切れ味が落ちたら買い直してもいい価格です。
いい感じでダルいので、刃があらぬ方向に飛んで行って1発で致命的なミスを犯すという心配がほとんどありません。
だからと言って彫れないことはなく、0.8mmという難易度の高い幅でも十分使えました。
スジ彫りが初めての人は安心して楽しめると思います。
あと他の道具を所有しているけど、持ってない刃幅を安く買い足したい人にもいいんじゃないでしょうか?
供給も安定してますしね。
現時点で気になるのは刃のラインナップ数。
後発品なのでこれから増えてくるかもしれませんがまだ少ない。
HGマイクロチゼルだけだと本格的なスジボリストさんは不満があるかもしれませんが、そこそこスジ彫りを楽しみたい人にとっては十分だと思います。
まだスジ彫り道具を持ってない人ならセット品の購入がいいでしょう。
スジ彫り道具比較まとめ
3つの道具で太目のスジ彫りを試してみました。
まだ練習が足りませんが今の自分なりに彫ることができました。
やりながら感じたのはそれぞれ個性や特徴があるということ。
一定の品質を満たした道具であればどれを使ってもちゃんと彫れます。
あとは練習して何度も彫って慣れるだけです。
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